観光公害

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観光公害(かんこうこうがい)は、観光がもたらす様々な弊害のこと。例えば、車両乗り入れによる震動騒音排気ガス渋滞、ゴミの投棄、プライバシー侵害、受け入れのための開発景観破壊環境破壊など。

各国の事例[編集]

観光公害を英訳すると「tourism pollution」(観光汚染とも)になるが、海外では一般的な言葉にはなっていない。

日本[編集]

日本においては世界遺産登録直後に見られる過度の訪問者数の増加が顕著な例として現れており、例えば白川郷・五箇山の合掌造り集落では前述のほぼ全ての事象が報告されており、富士山では登山者増加による環境負荷を危惧し、その抑制を講じることが登録条件の一つとされ、2016年2月までにUNESCOへ対応策提出が求められている[1]

最終的に世界遺産への推薦を取り下げた鎌倉も、ICOMOSによる現地視察調査のレポートで、慢性的な交通混雑が及ぼす文化財への影響が指摘され、「不登録」勧告が成された[2]

北海道美瑛町の「哲学の木」は観光客が写真撮影のためにを踏み荒らす行為が後を絶たず、土地所有者はやむなく木を伐採するに至った[3]。これは観光公害の典型例といえる。

また、韓国人やこの数年で急増した中国人観光客のマナーの悪さ(文化財・環境保護地区における立入禁止区域への侵入や喫煙とポイ捨て等)も問題となっており[4][5]、文化財への落書き排泄行為にも及んでいるほか[6][注 1]、今後需要が伸びる民泊での住民とのトラブルも懸念される[7]

スペイン[編集]

バルセロナには年間約3200万人の観光客が訪れる一方、それを受け入れる約7000軒の違法民泊があると言われ、ホテルの経営に影響が出ているほか、安価な違法民泊によってバルセロナの観光収入も少なくなってしまうことが問題となっている[8]。さらに違法民泊への参入者により地価や家賃などが上昇する事態となっている[8]

イタリア[編集]

ベネチアでは年間約2200万人の観光客が訪れ、地価や家賃の高騰、ホテルの増加による住宅エリアの縮小化などが発生している[9]。また、ベネチアでは巨大クルーズ船が寄港して観光客が2~3時間程度観光をするスタイルが多く、地元では混雑などの負担が生じる割に、観光客の滞在時間は短く、宿泊地にもなっていないため稼げないとして住民の不満が出ており、巨大クルーズ船の乗り入れの制限が議論されている[9]

サウジアラビア[編集]

サウジアラビアイスラム教聖地を有することから、異教徒が大挙押しかけることで公序良俗が乱れることを嫌い、観光客の入国を制限している。

派生語[編集]

前述のように世界遺産登録地における観光公害を、ユネスコに「"殺す"の接尾辞 cide」を付け、「unescocide(ユネスコによって殺された)」という造語まで登場した[10]

オーバーツーリズム[編集]

近年、過度な観光客の集中(オーバーユース)により観光地への負荷が懸念される事態が生じており、これを「オーバーツーリズム」と呼ぶ[11]

特に世界遺産においてはUNESCOやICOMOSが登録の条件として観光客抑制案の提示を求めるようになっており、日本では前述のように富士山の登山者数抑制とその実効性・監視体制が求められている。

脚注[編集]

参照[編集]

補注[編集]

  1. 富士山は以前より山頂トイレからの屎尿垂れ流しによる不衛生さと斜面に堆積したトイレットペーパーによる景観阻害が世界遺産登録への障害の一因とされていた(現在は環境配慮型トイレに変更)

関連項目[編集]

参考図書[編集]

ロン・オグレディ(著)、中嶋正昭 (翻訳) (1983) ロン・オグレディ(著)、中嶋正昭 (翻訳) [ アジアの観光公害 ] 教文館 1983 B000J7BY0O 137ページ

外部リンク[編集]

観光地再生のための政策課題と地域政策の可能性・方向性PDF 太田隆之